「迷子のコピーライター」を読んで、自分が迷子だったときのことを思い出した。
仕事が充実している。
それ自体は良いことであると思う。
半面、一段上のレベルの仕事をしようと思えば、今までと違った角度からのインプットが必要であると思っていた。
だからというわけではないが、
に申し込んでみたりした。
特に、田中泰延 - Wikipediaという方の文章が大好きになった。
Twitterアカウント(@@hironobutnk)もフォローした。
ある日、田中さんのtweetを見ていると、私の職場の近辺でイベントに登壇されるという。なんでも日下慶太さんという方の出版記念イベントらしい。日下慶太さん?誰それ?早速google先生に教えを乞うと、
や「近大ポスター」を手掛けた方だとわかった。
そういえば、塩谷舞さんの
で見たことあるわ、この人。
最初は「田中さんに会いたい」という気持ちだけだったが、俄然日下さんにも興味が湧いてきた。ただ、イベントに参加するかは正直まだ迷っていた。
実は、高校時代に漠然と「言葉を扱う仕事に就きたい」と思っていたことがある。
特にコピーライターという職業には憧れた。
勝手なイメージであるが、カオスな物事の要素をひとつひとつ吟味したうえで、消費者に届けたい魅力を絞り込み、消費者に届くための「適切な表現」を「言い当てる」、という思考法・表現法・繊細さが、自分に合っているように思ったからだ。(だけど大学時代に広告代理店への就職を志望していたやつはウェイウェイと勢いがあり、私と正反対の性格で不快だったため)いつかそんな想いは無くなっていた。
「イベントに参加するかどうかは、実際に本を見てから決めよう!」
そう思い、近くの書店に行った。幸いにして「迷子のコピーライター」はすぐに見つかった。実際に本を見て驚いた。
分厚い!
黄色い!
中身を試し読みしてみた。旅の話があった。ご自身や家族の話があった。取り組まれた仕事の話があった。けど、仕事の自慢話ではなかった。「ドヤ顔」感がなかった。「キレイに見せたろ」感がなかった。UFOの話があった。UFOの話はいまいちわからなかった。いらんのちゃう?とも思った。けど全体的に好感が持てた。だからイベントに参加することにした。
業界関係者じゃないため、若干の緊張というか、後ろめたさを感じながらイベント会場に向かった。会場に入ると準備のためか日下さんが既に登壇されていた。どこかの民族衣装だろうか、オーガニック系といえば良いのだろうか、僕には小汚い服装に見えた。単に僕にセンスがないだけだと言い聞かせた。会場の他の聴衆の方々を見た。全体的にシュッとした人が多い印象を受けた。美人が多かった。完全にアウェイだ。帰りたくなった。
イベントが始まった。田中さん、遠山さんという、会社の先輩2名にイジられながら、日下さんはお話をされていた。田中さんと遠山さんが日下さんを大好きなのが伝わってきた。
先輩のご両名が
「なんで今日俺らを呼んでん!?」
的なことを質問された。
日下さんが
「だってこんな先輩、今どき少ないじゃないですか!」
と仰った。おこがましいけど、すごく共感してしまった。
私事で恐縮だが、就職して数年たった一時期、文字通り壊れてしまったことがある。
肉体的も精神的にも跡形もなく壊れてしまった。どれくらいの期間壊れていたか、正確に覚えてないし、なぜ壊れたのかもあんまり覚えてない。とにかくしんどかった。つらかった。
ツギハギだらけでなんとか社会復帰したとき、陰ながら応援してくれる人の存在を知った。茶化しながら励ましてくれる先輩がいた。田中さん・遠山さんと日下さんのやり取りを見て、当時のことを思い出した。改めて自分を気にしてくれていた人たちの存在を思い出した。少しだけ涙が出そうになった。
イベントは楽しかった。1500円払って参加してよかったと思った。日下さんの真面目さと愛され具合が素敵だった。広告代理店の方に偏見の目を持っていた自分を恥じた。
人見知りで、観衆が3人だったら逃げようと思ってたけど、大盛況でよかった。
— もりふみ (@y_m1002) 2018年6月22日
商店街ポスターの人に会えてよかった。
お三方の絶妙な関係性を見れてよかった。
何より、見かけと異なり質・量ともに中身が詰まった本。
金曜の飲み会より楽しかった。
ありがとうございました。#迷子のコピーライター pic.twitter.com/4t0vJyEUsV
本を読んで、伊丹のポスターも手掛けられたと知った。友人の選挙の手伝いで伊丹に行った際、ポスターを見て「二番煎じだ」「パクリかよ」と思った自分を恥じた。製作者と商店主の方々が真摯に向き合って作ったポスターなんだから。
大嫌いだった文の里に行ってみた。
(補足:田辺駅以南の谷町線ユーザーにとって、ラッシュ時にやってくる「文の里行き」は邪魔でしかないのです。文の里という場所になんら罪はない。)
ポスターがあった。
ええ感じの店があった。
地方創生というテーマの中で
「地方の商店街がなぜシャッター通りになるか」
という課題に対して
「シャッター通り対策で、一過性のイベントをしても、商店街の経済的衰退は止めれない」
と書いてあり、その理由を知って私も納得していた。
ただ、イベントで遠山さんが仰っていた
「ポスター展をきっかけに、今まで『赤の他人に使われたくない』と店舗部分を貸し渋っていた店舗兼住宅の商店主さんが、店舗部分を貸し出すようになった」
というエピソードを聞いて、短期的・経済的にはまだまだかもしれないけど、長期目線で楔を打ち込むには、ポスター展のような企画はとても大事なんだな、と思った。
他にも、
・「通す」仕事より「作る」仕事に時間を割くべき
・自分の舞台は自分で作る
等、広告業界の人でない私にも、刺さる言葉がたくさんあった。
いろいろ書いたが、広告業界の人だけじゃなく、私のような一般人にも大変面白く読める本だった。買ってよかった。読んでよかった。
興味をお持ちになった方はぜひ!
ではでは今日はこのへんで。